「子宮頚がん予防ワクチンの危険性」提言に対する調査結果
[2010年7月31日起稿]



弁護士の南出喜久治氏は23日、『子宮頚がん予防ワクチンの危険性』を踏まえて16項目に及ぶ公開質問を行いましたが、その提言に対して当サイトでは主に「完全永久不妊」説について学術的な観点から調査を行いました。
以下に南出氏の主張と当サイトの調査結果を記します。


南出弁護士の主張 当サイトの調査結果
◎FDAがHPVは子宮頸がんの原因で無いと指摘した件について

子宮頚がんとは子宮の頚部に発症するがんであり、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスによって起き、多くの場合性交渉によって感染するとされてきた。ところが、これは正確ではないことが早くから指摘されていた。それは、後に触れるとおり、米国FDA(食品医薬品局)が平成15年3月31日の報道機関発表により、「HPV感染と子宮頚がんの発症とは関連性がない」ことを認めたことを前提とする請願書がFDAに提出されていた事実があったからである。つまり、これによれば、「HPV感染=子宮頚がん発症」という等式は否定され、HPVの感染を予防するワクチン(HPV感染予防ワクチン)では、子宮頚がんは予防できないことになる。にもかかわらず、「HPV感染予防ワクチン」に過ぎないものを「子宮頚がんワクチン」であると偽って、我が国では政・官・業・医・民あげてそのワクチンの接種を推進をしていることになる。

「HPV感染と子宮頚がんの発症とは関連性がない」とFDAが認めた事実はありません
確かに、ご指摘の公式文書では、"The FDA news release of March 31, 2003 acknowledges that "most infections (by HPV) are short-lived and not associated with cervical cancer"
(FDAは2003年3月31日のニュースリリースで、大部分のHPV感染は短期間であり、子宮頸がんとは関係ない)と記載されていますが、そのニュースリリースを参照しますと、 Most women who become infected with HPV are able to eradicate the virus and suffer no apparent long-term consequences to their health. But a few women develop a persistent infection that can eventually lead to pre-cancerous changes in the cervix.
(HPVに感染した女性の多くはウイルスを全滅することが可能であり、長期的に健康に対して明白な影響を受けることはない。 しかし、一部の女性は持続的な感染に発展し、それは最終的に子宮頚部の前がん状態につながる。 )と述べられており、FDAは一部の感染が前がん状態につながるとはっきり主張しています。

また、医学系の専門誌でも、「HPVの感染は子宮頸癌およびその前癌病変発症の最大のリスクファクターである」と明記されています。
ヒトパピローマウイルスと子宮頸癌−HPV の分子病理からワクチンまで−

更に、国際がん研究機関 (IARC) による発がん性リスクの一覧でも、HPVはGroup1(ヒトに対する発癌性が認められる)と分類されています。

ワクチンの追跡調査においても、接種群にHPV感染が起きない一方、対照群では145人中6人がHPVに感染し、そのうち3人に頸部病変が確認されています。
HPVワクチンGARDASILの長期追跡調査においても子宮頸癌の予防効果確認

このような、医学的、臨床的な裏付けがあるにもかかわらず、FDAの文章を曲解し、「HPV感染予防ワクチンでは、子宮頚がんは予防できない」と主張されても説得力がありません。


◎「サーバリックスにスクワレンが含まれる」との件について

また、このスクワレン (squalene)が混入した油性アジュバント乳濁液(水中油エマルジョン)などを解説した論文中に、AS04の「composition」(組成)には、「Aluminum hydroxide and MPL」(アルミニウム水酸化物及びMPL)とあり、MPLというものが添加されているとし、このMPLの「Current status」には、「Used in various trials in combination with oil (squalene)-in-water emulsions for malaria and leishmaniasis or in liposomal formulation」として、油性のスクワレン (squalene)が混入した乳濁液(エマルジョン)を「oil (squalene)-in-water emulsions」と表記して、油性のスクワレン (squalene)が混入されていることを前提としている。

ここで引用されている文章はこちらかと思われますが、確かにMPLの行に「Used in various trials in combination with oil (squalene)-in-water emulsions」と記載されているものの、南出氏が引用した原文にもある通り、マラリアおよびリーシュマニア症ワクチンや、リポソーム製剤でスクワレンと共に使われていると書かれており、サーバリックスにおいてスクワレンと共に使われているとは一言も書いてありません。
この文章で参照されている論文にも、「and oil-in-water emulsion plus monophosphoryl lipid A and QS21, designated RTS,S/AS02A」と書かれており、スクワレンとMPLが一緒に使われているのはAS02Aアジュバントであると分かります。
再び最初の文書を見ますと、AS02の欄に、「Oil (squalene)-in-water emulsion of MPL and QS21」と記載されており、MPLと共にスクワレンが使われているのはAS02であることが明らかです。

つまり、南出氏は左の推測により、サーバリックスにはスクワレンが含まれていると主張していますが、上記の考察で明らかなように、サーバリックスのAS04アジュバントにはアルミニウム塩とMPLしか含まれていません。
GSKのプレスリリースでも、「AS04は、アルミニウム塩とmonophosphoryl lipid A (MPL)から成っています」と記載されていますし、公式Q&Aでも「HPVワクチンに含まれているアジュバントは、油性アジュバントではありません」と明記されています。念のためGSKのお客様相談室にも確認しましたが、「サーバリックスにはスクワレンは含まれません」との回答を得ています。


◎「ペット去勢ワクチンのためにアジュバントが開発されたから、サーバリックスも去勢ワクチンだ」との件について

この子宮頚がん予防ワクチンと称するものには、強い副作用を起こすと指摘されているスクワレン(スクアレンsqualene)などが含まれたアジュバントがあり、これが不妊化させる危険のある異物であることから、このワクチンは断種(危険)ワクチンと言える。 このアジュバントはもともとペットの去勢・避妊効果のあるものとして開発されたものとされ(注3)、これを人間に投与すると妊娠ができなくなり、以降子供を生みたくとも、一切不妊治療ができない完全永久不妊症となる危険性があるとされる。

「私はそれ「アジュバント-9」とノバルティス社が今回のH1N1ワクチンに使用していると公表している「アジュバントMF-59」の間に、違いを見つけれない、ということを言いたいのです。今回のノバルティス社のワクチンH1N1豚(po-sine)たんぱく質構造とそれをアジュバント・ワクチンの中へ焼き付ける(Burn it to)製法が同じなのです。」
「レディース&ジェントルメン(みなさま、)私が言っているのは、私が1998年特許(ペットを不毛にし、動物たちをburnするワクチン)の内容に見るものと、今回の人間のsterilization(スターリライザーション=不毛にすること)(ここではMF-59アジュバントを使った製法)との間に、ほとんど違いがない、と申し上げているのです。」

まず、サーバリックスのアジュバントはAS04であり、上の検証の通りスクワレンは含まれていません。

ペットの去勢ワクチン云々の説は、'Immuno-Sterilization' In Humansという、ロスチャイルド陰謀論の一つが出典だと考えられますが、その中で指摘されているペット不妊化ワクチンの説明がこのサイトこちらの論文にあります。
そこで詳しい説明が記載されていますが、簡単に要約すると、
「透明体という卵子の周りを囲むタンパク質を豚から採取し、アジュバントと混ぜて鹿に接種することで、鹿の体内で透明体に対する抗体が生成され、正常な受精が妨げられてメス鹿は不妊となる」という仕組みです。

ここで重要なことは、ブタの透明体タンパクを、鹿に接種する点であり、アジュバントだけで不妊になるわけではないということです。

動物の不妊化ワクチンには、以下のように別の種類のものもあります。
Sterilization Vaccine For Cattle
こちらは、LHRH(黄体化ホルモン放出ホルモン*)の遺伝子を別のタンパクに組み込んだワクチンを接種することで、動物からLHRHを除去して不妊とするものですが、アジュバントは使われていません。
*排卵を起こすホルモン:参照

以上のように、不妊化ワクチンには不妊化を引き起こすタンパク質が必須であると分かります。
もちろんサーバリックスには透明体タンパクも、LHRH含有タンパクも入っていません。

製法が似ているから効果も似ているのではないかというのは、あまりにも杜撰な憶測ではないでしょうか。


◎「ワクチンにより自己免疫疾患が引き起こされ不妊になる」との件について

自己免疫疾患というのは、本来は細菌・ウイルスや腫瘍などの自己の生体細胞や組織と異なる異物を認識して排除するための役割を持つ免疫系が、自己の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまう疾患のことであり、日本産婦人科医会の公式見解によれば、自己免疫異常は習慣性流産の原因の一つとされている。自然流産を3回以上繰り返す場合を習慣性流産と定義しているが、3回以上続けて流産すればさすがに病的であると判断しているだけで、1回でも自己免疫疾患によって流産することもある。つまり、ギラン・バレー症候群や湾岸戦争症候群などの研究結果と免疫学の理論からすると、ワクチンの添加物であるスクワレンという異物(アジュバント)の入ったワクチンが接種されることによって、ワクチン成分の抗原(病原微生物であるHPVの処理生成物)に対する抗体が形成されるとともにスクワレンを抗原とする抗体も共に形成されるのであるが、それと同時に、これが原因で自己免疫異常も発症する可能性が高いということを示している。

上でも述べましたが、サーバリックスのアジュバントはAS04でありスクワレンは含まれていません。

しかし一般的に、アジュバントはご指摘の通り自己免疫疾患(autoimmune disease)を引き起こす可能性があるため、臨床試験では特に注意が払われています。

FDAのサーバリックスに対する安全性の報告書でも何箇所か触れられており、例えばAS04アジュバントの働きについては、
Immune stimulation by MPL requires temporal and local presentation of the adjuvant with the antigen to induce a local and transient innate response resulting in high and sustained immunity. These characterization studies provide no evidence for a plausible mechanism to induce autoimmune disease in humans.
「MPL(AS04の成分)による免疫刺激はMPLと抗原(HPVの一部)の一時的で局所的な存在が無ければ起こらず、それにより局所的で短期的な固有の反応は、強力で持続的な免疫力を生む。この性質により、人間において自己免疫疾患を誘発するもっともらしい証拠は何も無い」と記載されており、
そのような事は起こりえないと説明されています。

また、実際に68000事例以上の臨床結果が解析されており、対照群と比較して自己免疫疾患のリスクが増加した証拠は無いと結論付けられています。

このように、サーバリックスは自己免疫疾患の可能性についてもきちんと検討されており、少なくともこのメカニズムで不妊が起きる可能性はかなり低いと言えるのではないでしょうか。


◎サーバリックス接種直後の流産増加について

むしろ、次のことがサーバリックスには不妊化の危険があるとする決定的な証拠の一つであると言える。英国の医学誌ランセットの平成22年2月20日付け「HPV vaccination: waiting for evidence of effectiveness」(HPVワクチン接種:有効性の証拠を待っている)との記事(注22)及び同年4月14日付け「現在進行形の"人体実験"である子宮頸癌ワクチン」という指摘(注23)もある上に、サーバリックスの不妊化の危険(流産の危険)を示す確かなデータも存在するからである。それは、サーバリックスに含まれているアジュバントが、女性の免疫に影響を与え、流産のリスクにつながるかどうかについての調査(14か国、15歳から25歳までの26000人規模)の結果において、全体としての流産のリスク比較が「11.5%(接種群)vs10.2%(非接種群)」であり、さらに、最後の接種から3か月以内の流産のリスク比較では「14.7%(接種群)vs 9.1%(非接種群)とする平成22年3月2日付け「Risk of miscarriage with bivalent vaccine against human papillomavirus (HPV) types 16 and 18: pooled analysis of two randomised controlled trials」という調査報告が存在するからである

この結果についてはこちらでも検討しましたが、「接種群と対照群の流産率に差がない」という帰無仮説を立てたとき、全期間のp-valueは0.16、3ヶ月以内のp-valueは0.031となり、
5%の水準で検定した場合、
全期間では「両者に差が無い」との仮説は保留、
3ヶ月以内では「両者に差が無いとは言えない」となり、接種直後については統計学的に見ても流産の確率が増加していると見ることができます。

流産の確率については、一般的には10〜15%程度であるため、3ヶ月以内の14.7%は正常範囲内と言う事はできますし、引用された論文でも「総合的には、HPVワクチンと流産に関係があるという証拠はない」と結論付けられているようです。
それでも、接種群に流産が増加したことは事実ですので、当サイトでも、「直近で妊娠する可能性がある方は接種を控えた方が良いかもしれない」と注意喚起しているところです。
GSK社は、この結果についてきちんと追試験と原因の解析をしなければいけないのではないでしょうか。

ただし、この臨床結果を見る限り、試験期間内に約13000人中、対照群で1449人、サーバリックス接種群で1401人の新生児が無事に誕生しており、両者の人数がほぼ同数であることから、
接種をすれば必ず不妊になると連想させる「完全永久不妊」という言い方は不適当だと考えます。


◎ワクチンの効果について

安保教授は、「ワクチンなんて歴史的に効いたためしはほとんどありません。弱めたウイルスを使ってワクチンを作っているわけで、本物の抗体ができないのです。今までにワクチンを打った人で、その後インフルエンザにかからずに済んだという例は1つもありません。」、「若い人は免疫力が高いのです。でも、様々な病気になるのは抗体がないからです。若い人たちがこの際、一気に新型インフルエンザにかかって抗体を作ってくれれば、ワクチンで作った抗体よりもずっと効果がある。しかもこっちはタダですよ。」と断言する(注28)。 これは正鵠を得ている。つまり、この意味は、仮に、ワクチンに全く効果がないというのではないとしても、その効果は極めて限定的で微弱なものであるということを医学界や薬学界は忘れてしまって、「ワクチン万能主義」に陥り、免疫力や自然治癒力を強化させるべき医療の「目的」とその一方法として考えられたワクチン医療という「手段」とを倒錯させている現代医学への警鐘なのである。

引用された文章を読む限り、これはインフルエンザウイルスに対しての見解であることは明らかです。
良く知られていることですが、インフルエンザには多くの型が存在し、常に少しずつ変異するためワクチンは比較的効きにくいのです。

一方、これまでワクチンにより、天然痘ポリオ狂犬病などが根絶、もしくは大幅な封じ込めに成功してきました。
例えばポリオウイルスと人類の戦いの歴史などを知れば、いかに多くの人命がワクチンにより救われてきたか理解していただけると思います。

子宮頸がんについても、日本では毎年3000人前後が亡くなっており、全女性の1%程度がこの病気で死亡することを鑑みれば、接種により6〜8割程度のガンを予防できる現行のHPVワクチンは有効な一手段ではないでしょうか。

栄養バランスや生活習慣などに気をつけて自然治癒力を高めることは、もちろん病気を予防する重要な方法ですが、重い後遺症や、最悪死亡につながる致死的な病気に対して、ワクチンは有効な対抗手段であり、これを「極めて限定的で微弱」と片付けることは近代医学の進歩を否定するものだと考えます。


◎結論
以上の通り資料を検討する限り、接種により一時的に流産の可能性が増す危険はあるものの、ワクチンを受けた方が高確率で不妊になるという事は有り得ないと考えられます。
また、HPVワクチンは確かに子宮頸がんを予防する効果がありますので、最終的には各個人の判断で接種するか決めれば良いのではないでしょうか。
南出弁護士は、「完全永久不妊」というセンセーショナルな言葉で不安を煽ることで、ワクチンにより助かる命を、減らしてしまう危険がある事を熟慮されることを希望します。

[追記]izaブログへ転載しました。
[追記2]本検証を基に、南出弁護士へ意見書を送付しました

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